▼保育士が給食を食べるよう園児に強要していた桑名市の認定こども園では、同様の不適切保育が10年以上続けられていたという。小学校入学前の案内で、給食を残さないように入学までに家で指導してください、いじめの原因になりますから、と言われたと就学前の子どもを持つ保護者から聞いたのもやはり10年ぐらい前だった
▼保育園や幼稚園で給食完食トレーニングは必須なのだという。桑名の認定保育園で3歳児を四時間もかけて完食を強要したのはむろん虐待の疑いが強く、ほかにも不適切保育の実例が指摘されているのはもってのほかだが、給食完食を幼児に強いる行為の元をたどれば、案外小学校に源流があるのかもしれない
▼入学前の5歳児に完食指導をするのは正当で、3歳児なら不適切保育というのは、教育が子どもの成長過程に応じて提供していくものである以上、分からぬことでもないが、保育施設などを対象にしたこども家庭庁の初の虐待実態調査でも、不適切保育が1316件、うち「虐待」とされるのが122件。境界のあいまいさが指摘されている
▼桑名市の認定こども園の保育士らも、盗人にも三分の理ほどのつけいる隙があったのではないか。市の対応にも不適切が散見され、元園長らも黙認してきた。保育の質や保育行政が確立していなかったことを物語る
▼近く市に第三者委員会が設置され、検証される見通し。その結果によっては、県が法に基づき特別監査を検討するという。見て見ぬふりをしてきた感のある保育の現実にこれを機に行政が真剣になるのであれば、意義はある。