▼東京都港区の高級ホテル「ホテルオークラ」が全面改修のため営業を終了したのが平成27年8月31日。NHKの番組「ドキュメント72時間」が最終日前後の宿泊客にインタビューをしていたが、米国人の初老の弁護士と中年の建築家という男性カップルが伴侶として答えていたのには驚いた。NHKのマイクに自然体で応じていたことに、である
▼今年1月、国連の人権理事会が日本の人権状況を審査し、119カ国から300項目の勧告が出されたが、LGBT(性的少数者)関連では20カ国が是正を求め、うち米国は、性的指向や性自認への差別を法律で禁止し、同性婚の合法化を勧告した
▼LGBT理解増進法案が曲折を経て今国会提出の気配。先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の議長国ながら唯一、差別を禁止する法的枠組みがないことや首相秘書官が「見るのもいやだ」などと語って反発を招いたことが、皮肉にも追い風になった
▼法案は自民党が2年前にまとめ、保守派の抵抗でお蔵入りした経緯がある。2年のブランクがあるが、最終案は「性自認」を「性同一性」、「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」へ、さらに後退させた
▼それでも後進国としては一歩前進とは言えようか。県内の人権団体も、理解増進法案の文言に共感し、他人の性自認、性指向の暴露「アウティング」を禁じる県条例や、パートナーシップ宣誓制度を「全国都道府県に先駆けて」と評価している
▼同感。だが、世界の大勢の中でどんな位置づけにあるかも、俯瞰して意識しておかねばなるまい。