▼桑名市の認定こども園で保育士による虐待が疑われる不適切行為が確認されてすぐ、こども家庭庁が、保育施設の初の虐待実態調査を発表した。園児の足をつかんで宙づりにした元保育士が逮捕されるなど全国で不適切保育が相次いだためという
▼去年4月から12月の間、保育所で914件、認定こども園など保育施設全体では1316件。うち「虐待に当たる」とされたのはそれぞれ90件、122件。桑名市だけのことではない。伊藤徳宇市長は詳しい調査をして再発防止を誓う一方、「どうしてこういうことが起こったか」
▼十分な保育体制を確立していたのにどうして、という意味か。一体何が起きたのか分からない、との戸惑いか。待機児童問題で「保育園落ちた日本死ね」の匿名ブログが日本中を席巻したのは平成28年。保育施設の急増を迫られた時の安倍政権は、得意の“岩盤規制の緩和”で対応。無資格やパート保育士の許容枠を拡大。企業内や民間保育所の規制も緩めた
▼また、保育の質の向上には、多いとされる保育士一人当たりの担当児童数は変えず、保育士を増やした施設に条件付きで補助金を交付する手法を取った。結果的に、保育の質は施設によって格差が広がり、保育士に過酷になる
▼事故や不適切保育が話題になるたびに、社会福祉法人熱田福祉会の平松知子理事長は児童の定員、正規保育士の割合、休憩の実態が気になるという。初めての調査にもかかわらず、虐待を報告する回答は多かった。虐待確認数のおよそ10倍
▼現状や制度に危機感を持つ保育士の悲鳴かもしれない。