伊勢新聞

2023年4月23日(日)

▼専属契約を結んでいた芸能事務所の男性プロデューサーによるセクハラで精神的苦痛を受けたと事務所を訴えたタレントの愛内里菜さんが二審も敗訴した。いじめ問題は被害者の主張が尊重されるようになった。強姦罪などの刑法改正も、同意があるかどうかが判断の決め手になった。が、裁判長は「優越的立場を利用してセクハラをした客観証拠はない」とし、同意の存在について特に注視していないようだ

▼芸能界ではジャニーズ事務所創業者のセクハラが問われている。死去した時は偉業が絶賛されていたから驚きだが、#MeTooもきっかけは米ハリウッドの名プロデューサーの数十年に及ぶ性的虐待疑惑だった。愛内さんが虚偽の申し立てをしているというなら、同意の存在の有無とともに申し立てをした理由を明らかにしなければ判決への信頼は得られまい

▼こうした判決のたびに、裁判長が女性だったら、と気になる。今年の国連人権理事会の日本への勧告は、上位に女性への差別解消・ジェンダー平等が加わった。平成18年のジェンダーギャップ指数は世界で79位、平成4年は116位。国会議員のクオーター制導入や夫婦別姓が勧告のたびに指摘されている

▼大学医学部が女子学生合格率を長年にわたり20%に押さえている現状が多いことが告発されたが、女性患者に産婦人科受診、乳がん検診、硬毛疾患をはじめ、いかに男性医師での診察を嫌う人が増えているか

▼「長生きしてね」「お体を大事に」と励まされる機会が増えてきたと、81歳の女医(亀山市)が県医師会の機関誌に書いていた。