▼安倍晋三元首相が参院選の街頭演説中に銃撃されて死亡してから1年もたたぬのに衆院補選の応援演説に和歌山市を訪れていた岸田文雄首相が爆発物を投げつけられた。テロは伝染する。いずれも選挙期間中のことで民主主義への挑戦、暴挙という首相などの非難は当然として、選挙期間を狙ったというより、選挙期間でもなければ首相などの日程を知る手段がなかったというのが実際なのではないか
▼安倍元首相銃撃事件でも、山上徹也容疑者は自民党のサイトで日程を知った。前日岡山へ向かい、荷物検査の厳重さで諦めたが、翌日の長野の日程が自分の地元奈良に変更になったことを知って再び襲撃を決意している
▼理由は母親が旧統一教会に巨額の寄付をし、ために自分が窮乏して自殺も余儀なくされるようになった。旧統一教会の活動を許している実力者に思い知らせてやるというのが動機とされる
▼テロは、多く表面は世直しの衣をまとう。ナショナリズムの色彩が強く、大久保利通の紀尾井坂の変なども不平士族の犯行ながら、民権抑圧や情実横行などを告発する斬奸状を携えていた。二・二六事件は昭和維新。が、元首相銃撃事件は個人的様相が強い
▼いうならば、大正デモクラシー時代の原敬首相暗殺事件。実行犯の大塚駅転轍手・中岡艮一は、原が政商や財閥を庇護する政治を行ったことへ反発したという。その10年後、浜口雄幸首相を銃撃した佐郷屋留雄は金解禁で説明と違い一向によくならない景気への不満をあげている
▼岸田首相爆撃事件の動機は不明だが、案外個人的事情が絡むのかもしれない。