伊勢新聞

2023年4月6日(木)

▼コロナで制限されてきたもろもろの〝解禁〟に呼応するかのように、県交通対策協議会は3年ぶりに交通死亡事故多発警報を発令した。分かりやすいと言えば分かりやすい。まことに―切ないことである

▼なぜ事故が起こるか。すぐ元のもくあみになってしまうか。県警の発表ではなかなか分からない。いつぞや夜勤明けの警察官が公用車で出かけて道路横の立木に衝突した事故があった。家に戻る途中だったのか、新たな公務に向かうところだったか、衝突原因も含め調査しているという報道があったが、それっきり。その後特に報じられることはなかった

▼当事者が警察官だからうやむやになったのかとも思ったが、調査中とされた原因がのちに分かったとされることは、警官に限らずほとんどない。交通安全の推進に役立つ材料になることもないわけで、今回の多発警報発令でも、県警が発表するのは死者数と高齢者比率の高さ、また自転車や歩行者など交通弱者と共に半数を占め、事故現場は主要幹線道路が多く、時間は薄暮時

▼まるで警察が取り締まるのに必要な留意事項が列記されているようで、市民が気を付けるべき情報としては漠然とし過ぎている。自転車の場合なら、ただ事故が多いというだけでなく、ヘルメット着用が促されたことなどから、最近の事故例を踏まえた具体的な呼びかけがあってもいい

▼7月から電動キックボードが免許不要で歩道を走る。電動車いすの利用が増え、事故が多発したのは周知の通り。新交通手段の登場で新たな事故も想定される。安全の周知に、早過ぎるということはない。