伊勢新聞

<まる見えリポート>電動キックボード7月法改正 免許不要に事故増危惧も

【法改正により7月から運転ルールが変わる電動キックボード=鳥羽市内で】

電動キックボードの免許不要での走行、ヘルメット着用の努力義務化などを盛り込んだ改正道交法が7月1日に施行される。次世代モビリティの代表格として普及に期待がかかる一方で事故など安全面での課題も多く、今後の対応に注目が集まる。

電動キックボードは、モーターを搭載した自走可能なキックボードを指す。小型で運用がしやすく、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「新しい生活様式」や、脱炭素社会の実現に向けた取り組み等を背景に全国で関心が高まっている。

現行法では、個人所有の電動キックボードは原動機付自転車(ミニバイク)と同じ車両に分類されており、公道で走行する場合には最高速度30キロ以内で、運転免許の取得とヘルメットの着用、自賠責保険の加入やナンバープレートの着用などが義務づけられている。

また貸し出しによるシェアリング事業の場合は小型特殊自動車としての扱いとなり、最高速度15キロ以内、自転車レーンも走行できる、などといった違いがある。

7月からの改正法では、最高速度が20キロ以内に制限されるが16歳以上であれば免許不要、ヘルメット着用は努力義務となる「特定小型原付」の枠組みを新設。この区分であれば個人所有もシェアリング事業も同じルールが適用されることとなる。従来の原動機付の枠組みもそのまま残る形となり、利用者は2つの選択肢から選ぶ形となる。

三重県内で唯一、電動キックボードを開発、販売しているフヂイエンヂニアリング(鈴鹿市住吉5丁目)を経営する藤井充さん(47)は「免許を持たず、安全教育も受けていない人が時速20キロで公道に出れば確実に事故は増える」と危惧する。

改正法では、一定の要件をクリアした最高時速が6キロ以下に制限された車両に限り、表示灯を点滅させることで「特例特定小型原動機付」として歩道を走行することができる。これ以外は原則、ミニバイクと同様に道路標識や表示に従う必要があり、飲酒運転や携帯電話の使用等の違反には罰則規定が適用される。関連する事故は増加傾向にあり、昨年は全国で死亡事故1件を含む74件の事故が発生した(警察庁調べ)。

藤井さんは「マーケットが大きくなる可能性に期待もあるが、事故が増えることで社会問題化すれば、かえって業界の寿命を縮めることにもなる。本質的には免許は必要と考えるが、そうでないなら安全教育の徹底が必要」と訴える。

鳥羽市の相差地区でまちづくりを目指す相差海女文化運営協議会では、令和2年12月から、県の事業を活用して電動キックボードのシェアリングサービス「0032Ride」を開始した。新しい生活様式に沿った地域の魅力発信ツールの一つとして導入当初は期待を寄せていたが、利用は伸び悩んでいるという。

担当する小﨑則彦さん(51)は「1カ月の利用は平均で30人前後。インバウンドなど興味を示す観光客もいるが、免許や事前の登録手続きが必要だったりといった理由で諦めてしまう人も多い。ヘルメットに抵抗を持つ人もいる」と話す。

サービスでは、事前にスマートフォン等の端末に免許証や決済方法等の個人情報を登録することで初めて利用が可能となる。改正により利用へのハードルが低くなることに期待する反面、必要となる手続きへの対応に不安も残るという。

「手続きの説明や事前の講習などふたを開けてみないと分からない。利用の増加には期待したいが、かえって煩雑になるなら今のままの方がいい。慎重に見極めていきたい」と話す。

県警は今後、県教委と連携して交通安全教室を開催して高校生へのルール周知を図ると共に、販売業者やシェアリング事業者に対しても専用のガイドラインに沿った購入者らへの説明や違反防止への対応の徹底を求めていくとしている。

交通企画課の伊藤勝彦次長は「免許を持たずに乗れるのは魅力的だが事故の増加も懸念される。しっかりと広報啓発していく必要がある」と話していた。