▼「究極の選択」というクイズがはやったのは10年ほど前か。心優しきブスと性格の悪い美人とどちらを選ぶかなど、ムムムっと言わせる二者択一問題があちこちで問われ、答えることが人間性の診断にもなると言われたが最近は飽きられたか
▼そんなことを思い出したのは、県教委の処分発表を見たからだ。生徒に暴力を振るった61歳の県立高校教諭が懲戒処分の戒告となり、やはり体罰を加えた60代の県立特別支援学校の男性労務員が文書訓告を受けた
▼教諭は机周りの整理整頓の指導を守らぬ生徒に腹を立て、3人を平手打ちにし、1人の鼓膜を破るけがをさせた。労務員はスクールバスで騒ぐ特別支援学校の男子生徒の頭頂部を「しつけの延長」と称し、プラスチック製バインダーの背表紙でたたいた。けがはなかった
▼処分の差は、結果の重大性があるのかもしれない。「腹を立てた」という軽率さも影響したか。体罰禁止はいじめと並ぶ教育現場の根絶対象。「しつけの延長」という労務員の釈明をたしなめなければならない立場でもあり、処分の重さの違いになったのかもしれない
▼もっとも、障害児の頭をバインダーでたたく行為が特別支援学校で起きていたというのは障害者教育や障害者に対する法・条例の観点から、教諭の体罰以上に問われることがあるのではないか
▼障害者差別問題は、ひところの熱の入れ方からかなり冷めてきたともいわれる。県教委は教諭の体罰問題と労務員の〝障害児へのしつけ〟という〝究極の選択〟を、どう判断し結論づけたか。ちょっと教えてもらいたい気がする。