2023年3月22日(水)

▼長く半導体の巨人と言われ、1992―2017(平成4―29)年、世界半導体売上高ランキング1位のインテルの減速ぶりを本紙『半導体漫遊記』がつづっている。「インテルといえども、一つかじ取りを間違えると経営破綻する可能性がある」と続ける。具体的「間違い」の指摘はないが、露光技術を駆使したEUV(極端紫外線リソグラフィ)による先端半導体製造法に後れを取ったということか

▼半導体市場は浮沈が激しい。東芝に君臨した西田厚聰氏が会長時代、半導体の減産を決めた真意について聞くと「半導体は産業のコメ。コメがなくて生きられますか」と逆に問われた。飽和状態の市場を生き残るため、韓国大手のサムソンに対するメッセージだというのだ。その思惑が成功したようには見えない

▼昭和58年創業し、曲折の末に撤退した富士通多度工場にも、半導体興亡の軌跡を見る。日本は同じメモリー素子を大量生産する技術全盛時代で「工場」の名称で立ち上げ、その後「研究所」に改名。やがて分社化して切り離し、売却に至る。県は富士通専用の多度工業用水を設営し、平成26年に事実上、閉鎖している

▼日本の技術は大量生産可能なメモリー製造から出発し、プロセッサー主体のインテルとは別世界の中で世界を席巻していった。衰退していく過程と無縁ではあるまい。日本の半導体技術が逆風になったいま、三重大学がその人材育成や研究開発強化などを目的とした「半導体・デジタル未来創造センター」を設置する

▼いまごろ、というべきか。いまだからこそ、というべきか。