伊勢新聞

2023年3月21日(火)

▼体内に取り込まれると発がん性や免疫機能を損なう有機フッ素化合物(PFAS)の飲料水含有基準を米環境保護局(EPA)が厳格化することで、日本の目標値見直しの検討に大きく影響するという。何らかの前進があるということか

▼EPAが飲料水一リットル当たりのPFAS基準をそれまでの3千分の一へ、一挙に引き下げたのは昨年3月。米基準を参考にしていた日本が見直しの水質基準逐次改正検討会を開いたのは今年1月だ。結果は変更を見送りにしている。世界をけん引するもう一つの機関WHO(世界保健機関)の基準が日本より倍近く緩く、様子を見ようという結論になったらしい

▼PFASは水や油をはじく性質からフライパンのコーティング、レインコート、化粧品はじめ航空機火災用の泡消火剤まで、用途は「台所から宇宙まで」といわれるが、問題は自然界で分解しないことで「永遠の化学物質」ともいわれ、オゾン層を破壊するフロンガスもその一つ

▼東京・多摩地区の市民団体が住民65人の血液を検査した結果、全米医学アカデミーの健康リスク値を半数以上が上回り、東京都は同地区の水源からの取水を禁止した。沖縄県も高水準で、米軍基地の影響が指摘されるが、米国の新基準が基地に適用されるかを防衛省は回答していない

▼新基準は広範囲な業界の反発が予想され、米議会通過は予断を許さない状況。日本も同様で、先の検討会の先送りはそのためとも言うが、基礎データがなく、基準を設定できないとの見方もある

▼世界の大勢が規制に向かう中、日本も見送りを見直すなら幸い。