伊勢新聞

<まる見えリポ>大学野球の村田選手に注目 NPB入り期待 県リーグと相乗効果も

【國學院大との練習試合で打席に立つ皇學館大・村田内野手=6日、横浜市内で】

三重中京大出身で、平成29年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)銅メダルメンバーの則本昂大投手らを輩出している三重の大学野球。1人の選手の影響で、野球関係者の間でじわじわと知名度を上げている。皇學館大硬式野球部3年の村田怜音内野手(21)。人並み外れた体格を生かした打撃に、感度の高い野球ファンだけでなく、プロ野球・日本野球機構(NPB)のスカウトも関心を寄せる。平成25年の三重中京大の閉学以降実現していない、県内大学からの新卒NPB選手誕生へ、周囲の期待は膨らむ。


身長196センチ、体重115キロの大型選手が打席に入るたびバックネット裏に陣取ったスカウトらがビデオカメラなどを構える。皇學館大が今月6日、横浜市内で、昨年秋東都大学野球リーグを制し、明治神宮大会で準優勝した國學院大と行った練習試合での一コマ。視線の先には一塁手、4番で先発出場した村田選手がいた。

試合は5―16の完敗。村田選手の成績は5打席1安打だった。初回先制の3ランを放ち、打撃で存在感を見せた一方で、國學院大の反撃に遭った終盤は守備でミスを出した。自らの失策の後、足をたたいて悔しがり、試合後、チームメートとともに國學院大守備コーチの助言に聞き入る姿は真剣そのものだった。

松阪市立久保中を卒業した当時身長は既に190センチを超え地元の野球関係者から注目される存在だった。相可高校時代は高校3年目だけで20本塁打を記録。高校最後の夏の三重大会はベスト16で敗退したが3本塁打で気を吐いた。

高校時代から一貫してプロ志望。県外の強豪大に進む選択肢もあったが「地方で頑張って大学1年から経験を積みたい」と県内に残り、三重県大学リーグで、平成30年秋から連覇を続ける皇學館大に進んだ。

大学1年目から中軸を任されると3年秋の三重県大学リーグで打率4割8分4厘、本塁打4本などの成績で初のMVPを獲得。神宮大会4強の名城大に次ぐ準優勝で終えた昨年10月の東海地区・北陸・愛知3連盟王座決定戦は金沢学院大戦のセンターオーバーの2ランなどの活躍で敢闘賞を受賞した。

公式戦が始まるのは4月だが、中央球界に向けて一つでも多くインパクトを残したいと、開幕に向けた練習試合から全力プレーを心がける。NPB入りに近づくため守備の強化にも力を入れる。所属しているのは地方リーグのため、試合や練習の自分のプレーを撮影した動画をSNS(交流サイト)に上げて自己アピールにも余念が無い。


皇學館大野球部の関東遠征は創部以来初の取り組み。平成27年の全日本大学野球選手権以来遠ざかる全国大会出場に向けたチーム強化が目的だが、村田選手を始め、上のステージで野球を続けたいと願う学生たちが名前を売り込む機会になればと、東都大学野球連盟出身の森本進監督らの人脈も生かして実現した。平成27年度全日本大学選手権準優勝の佛教大などに挑む関西遠征も予定する。

昨年から選抜チームを編成して、加盟校が一致団結して強化活動に取り組む三重県大学リーグにとっても目玉選手の登場は好材料だ。四日市大の総監督も務める市岡三年・東海地区大学野球連盟理事長は村田選手について「三重県リーグの中で現状、全日本にアピールできる唯一の選手」と評価。「彼の活躍を起爆剤にリーグもレベルアップしてほしい」と語り、相乗効果を期待している。