伊勢新聞

2023年3月20日(月)

▼認知症の6―7割を占めるアルツハイマー病の薬「レカネマブ」を製薬大手エーザイなどが開発したという朗報が伝えられ、認知症を恐れる多くの人々の福音になった気がしたのもつかの間、まだまだ道は平坦ではないらしい。「効果少なく、副作用に懸念」と本紙『すこやかゼミ』に

▼アルツハイマー病の原因物質、脳に蓄積される異常タンパク質アミロイドベータの凝縮体を除去するというのがうたい文句だが、偽薬との比較で示された治験の結果は、その差わずか0・45。死亡人数はほとんど同じで、副作用の確立は治験者の方が、無視できぬほど多かった

▼「燃える闘魂」で知られたプロレスラー、政治家のアントニオ猪木(本名・猪木寛至)が取りつかれた死病が「全身性アミロイドーシス」であることは本人が告白していた。やはりアミロイドというタンパク質の〝ごみ〟が水に流れずに蓄積し、さまざまに臓器の分子と結びついて障害を引き起こす

▼アントニオ猪木の場合、心臓の分子と結びついた「心アミロイドーシス」。脳に蓄積し、神経細胞を変性、死滅させ、スポンジ状にしていくのがアミロイドベータが原因のアルツハイマー病だ

▼人間はかつて結核を「不治の病」とし、次いでがん、心臓病などが代わり、強毒性新型コロナウイルスが、新たな脅威となった。いずれも免疫系との親和性などが指摘されたが、ヤコブ病やアルツハイマー症など、それらとは異質な原因物質が人間の生存を危うくしていく

▼生存を維持する仕組み自体が崩れていく。症状を抑える考えでは乗り越えられない気がする。