伊勢新聞

2023年2月27日(月)

▼亀山市議会はマスク着用の「個人の判断にゆだねる」指針を国、三重県の3月13日に先立ち、24日の定例会から始める方針を宣言した。素顔で登院、質問に立った議員もいたのだろうか。英断である

▼ほぼ3年間、全国民がマスク姿で通して習慣、義務感の変更について国、県とも及び腰に見えた。マスク着用の解除が議論の出発点としてあったが、結局「個人の判断」に落ち着いた。背景に「マスク警察」と呼ばれる人さえ出現した国民感情にある

▼猛威を振るう新型コロナに対し、国民の自己防衛の手段は手洗い、消毒もさることながら、マスクに頼るしかなかった。アマビエなど古来、疫病退散の魔よけや呪文の類いにすがる庶民は多かったが、マスクはそれに近い役割を果たした。〝マスク依存症〟なる言葉が医学関係者の間でささやかれた

▼かつて風邪などでマスクをする国民の多さに欧米の製薬会社が日本人の衛生感覚を見て、進出を決めたとも言われる。日本人のマスク好きはコロナ禍でもはっきりした。私事で恐縮だか、鞍馬天狗の物語、映画で育った一人として、黒マスクは往年の自分に戻るようで心地よかった。花粉症のほか、マスク顔が美男美女に思えて離せなくなった人も少なくないという

▼マスクを外して本当に大丈夫か。白い目で見られたりしないかと心配する向きは特に若い人に多いという。亀山市議会は少なくともそれら故なき非難を一身に受け、市民の不安を一掃する効果はあろう。市民の顔色をうかがって決断できぬ為政者も少なくない世の中だ。市民をリードする議会として意義深い。