▼県が物価高騰の県民支援に発行した「みえ生活衛生サービスクーポン」が無料にもかかわらず約3千万円分余ったと先月末、本紙が報じた。「周知が足りなかった」と県は説明。使える店が計画の約半数だったことや使用可能期間の短さも指摘されていた
▼申し込んだ友人はまずクリーニング代3050円の半額分に1500円を使い、美容院に行き500円分が残った。千円以上の浴場はなく、ほかに使い道がなく断念した。余った3千万円に含まれないが、そんな県民も多かったのではないか
▼さて、国がポイントを配布するなどして普及に懸命なマイナンバーカードである。こちらも、5月までだから急がなければならない。県の交付率は全国平均を下回り、議会で三宅恒之デジタル社会推進局長が取得しない理由の上位は「申請が面倒」「メリットを感じない」「情報流出が怖い」
▼質問者の津村衛議員は国のやり方が「乱暴」と指摘したが、こちらへの回答はない。市町に働きかけるほか「カードの利便性や安全性を周知したい」
▼身分証明書になり、戸籍謄本をコンビニで取れるなどが「利便性」なのだろうが、肝心の保険証の機能に現場が対応できているのだろうか。医療関係機関などでは、保険番号の更新に2カ月かかり、社会保険から国民健康保険への変更に確認が間に合わず、いったん現金での自己負担もやむなし
▼これまで通り、保険証の提出を求めるしかない医療機関もある。「寂しさに宿を立ち出でて眺むればいづこも同じ秋の夕暮れ」。いずこも同じで、寂しいのは秋の夕暮れだけではない気がする。