▼隔世の感はある。本紙「まる見えリポート」が伝えた「認知症フレンドリーシティ鈴鹿」の「スローショッピング」の取り組みである。ゆっくりと会計できる「おもいやりレジ」の鈴鹿市のマックスバリュ岡田店で、買い物を楽しむ認知症の女性が、正面からほほ笑んでいる。障害者権利条約を批准した国・地域の中で日本は異質といわれるが、時代は間違いなく進んでいるようだ
▼かつて障害者を撮影するには正面を避けた。特に精神障害者の場合、やや後ろ側からカメラを向けるのが常識で、特別支援学級などの活動は担当教諭から事前に注意事項として確認を求められた。家族が新聞に掲載されることを嫌うのだ
▼書道展を報じて、児童の名前が分かる写真が掲載されていると学校から呼び出されたことがある。新聞写真で判別困難に思えたが、児童本人は大喜びだったが、保護者から厳重抗議があったという。謝罪はしたが、特別支援教育のあり方として学校も考えるべきではないかと言ったことを覚えている
▼変わらぬなと思ったのは買い物予算が施設での作業の収入500円ということ。就労支援の「工賃」であり、雇用契約に基づく賃金ではないということだ。障害者雇用が進む中で精神障害者は取り残される傾向で、最低賃金の除外規定も存続する
▼県が精神障害者雇用促進として平成26年に始めたステップアップカフェ「Cotti. 菜(こっちな)」は賃金で、農福連携の積極姿勢につながった
▼「地域の応援者を増やして社会の仕組みを変えていければ」と市の長寿社会課長。むろん行政の役割は大きい。