伊勢新聞

2023年2月19日(日)

▼サッカーJFL鈴鹿の運営会社から多額の現金を脅し取った元役員の論告求刑が津地裁であり、検察側は懲役四年を求刑した。事実関係に争いがない中、検察は「被害会社の意思決定に強い影響を与える強度のもので態様は悪質」。弁護側は「(被告は)トラブルの解決や泥をかぶり事後処理をしてきたという自負」があったとして「違法性は相当程度に低い」

▼どう見るかの違いなのである。おまけに、県営鈴鹿青少年の森公園敷地内の無償提供による同運営会社のサッカースタジアム建設が白紙に戻って、事件は最大でもJFL鈴鹿のごたごた、サッカー界の〝コップの中の争い〟に過ぎなくなった。交流サイトSNSを使った元役員の5千万円の請求に、運営会社が2500万円も支払った経緯のどこがどう「悪質の態様」なのか、よく分からぬまま終わろうとしている

▼五輪汚職や談合などの事件をみても、スポーツを巡る巨額の金銭授受は、自分らが作り上げた虚構の中のやりとりに映る。著名な国際大会になるほど、選手より役員や競技関係者の参加者が多いなどと言われたりする。盛り上げることで富の集中をもたらす

▼JFL鈴鹿のスタジアム計画もどこか人頼り、スポーツビジネスを思わせるものが少なくなかった。元役員は、逮捕直前まで、スタジアム建設資金が運営会社にないことを繰り返し自身のサイトで指摘していた。JFL鈴鹿を金のなる木に育て損なったのが運営会社の最大の誤算だったか

▼見方を変えれば、元役員はそんな運営会社の夢物語を現実に引き戻して見せてくれたのかもしれない。