▼県警が収賄容疑で逮捕した名張市営繕担当室長の勤務先、同市役所などを家宅捜索し書類など約百点を押収した。容疑は放課後児童クラブの電源切替工事の随意契約に伴う便宜だが、別工事でも可能性がないか調べているという
▼巨額の官製談合が世に飛び交っているが、名張市の贈収賄事件は、業者選定に有利に計らった見返りにゴルフクラブを複数回計15本(約40数万円相当)贈った疑い。金額の多寡の問題ではないとしても、けしからんと大憤慨する気にはならない
▼津競艇CM発注を巡る昨年の津市の収賄事件は、担当職員とあっせんしたテレビ会社社員が受け取った金額は18万円余。贈賄側は時効が成立していて事件としてもしっくりしない。こちらも大々的に家宅捜索したが、新事実が出てきたわけではない
▼かつてこうした贈収賄事件は上層部のどこあたりまで広がるかが関心事だった。今はそんなこともなくなってきたようだが、津地裁は判決で、広告会社の弱みにつけこんで自ら要求するなど「常習的で悪質」と断じ、テレビ会社社員は自身が贈賄に問われぬ非公務員の立場から現金授受を働き掛けたとしている
▼計算され尽くした犯行、あるいは「これぐらいなら問題になるまい」とたかをくくったのかもしれない。とすれば名張市の贈収賄事件も、また別の見方が出てくる。公務員は常に周囲を見回し、変わり種がいると、あそこまではいいのかと自身も少し変わる、と言ったのは〝平成の鬼平〟の異名を取った中坊公平である
▼箱の中に腐ったミカンが一つ現われると、たちまち広がる、とも。