伊勢新聞

2023年2月8日(水)

▼現職を破って菰野町長選で当選した諸岡高幸氏は出馬理由に「町と町民のコミュニケーションが十分に図られず、危機感を感じた」と語っていた。選挙戦でも、歴代仕えた町長らと現職との町民を思う気持ちの違いをあげていた。具体的説明が難しい訴えだが、有権者に受け入れられたのは、それぞれが思い浮かべる事件があったからではないか

▼筆頭が役場前のぼや騒ぎだろう。昨年5月の日曜日、除草作業中に失火し、役場玄関前の植え込みを燃いたが、町が消防に連絡したのが4日後で、警察には届けなかった。のち議会などで問題にされると、政治的攻撃のように捉え、反発するそぶりも。追及する議員が町長執務室周辺に立ち入ったとして告訴した

▼警察は書類送検したが、検察は不起訴。書類送検の時は沈黙の警察に代わって町が詳細説明。不起訴の時は「証拠不十分」と説明する検察に対し、町は沈黙した。継続事業の突然の中断や、夜間駐輪禁止の近鉄湯の山線菰野駅前駐輪場から自転車を町長自ら別の場所に移し、上下逆さまに置いて、町民の間に賛否の議論を巻き起こした

▼いずれも、その行動について町民に理解を求めようという姿勢は希薄で、議会の説明要求には「自分をおとしめようとしている」などと反応し、対立をあおっているかに、また独断専行に見えなくもなかった。2千票の票差で1期目の現職が敗れたことが町民の気持ちを物語っていないか

▼投票率減は町政への不信もあるか。まずは「オール菰野で明るく住みよい町をつくっていくことを約束する」との勝利後の言葉の実現だろう。