伊勢新聞

2023年2月7日(火)

▼愛知県知事選で現職の大村秀章氏が大差で四選を果たしたことにそれほど関心はないが、報道機関が今後の課題をあげる中で筆頭が「河村氏(たかし・名古屋市長)との連携」というのにはげんなりさせられる。どうも見込みはないらしい

▼河村市長が知事候補を模索し断念したのはよく知られる。大村氏当選で「市民、県民の不利になることはしないので安心して」「礼儀なので『おめでとうこざいます』と、これは言っとかないかん」と言う一方で、低投票率に絡め、対立候補を擁立できなかったのも要因として「申し訳にゃあ気持ちでいっぱい」とぶり返した。いたずらに相手を刺激しているとしか思えない

▼隣の県の知事と市長がけんかしても普段ならおもしろいだけだが、人類は今、コロナのパンデミック(感染爆発)に襲われている。為政者なら何よりも連携が優先てしかるべきではないか

▼遠くの相手と同盟し、近くの相手を攻める「遠交近攻の策」は西暦一〇〇年代の中国の兵法書『兵法三十六計』に見える。隣同士が攻め合ってきたのは2千年来このかたで、県と津市も、ひところほどではないが、一志病院の運営や津短大の県移管などに、ぎくしゃく感がのぞく。利害が一致し、また対立するからだろう

▼中部国際空港など、東海三県一市は地域浮揚策に当初は手を携え、終盤は熾烈(しれつ)な駆け引きを繰り広げてきた。コロナ対策では名古屋市が三県と、ともにすることはなかった。影響は計り知れない

▼さしあたり県に関係深いリニア中央新幹線問題。トップが陰に陽に角突き合わせて、いいことは何もない。