▼慣例の記者団の非公式取材で性的少数者への差別発言をした総理秘書官(当時)はその夜のうちに公式取材に応じ発言を撤回。「首相に申し訳ない。首相がそういうことを考えているわけでもないのに私個人の意見で迷惑をかけた」と陳謝した
▼「公務員はすべて国民全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではない」と憲法に記すが、国家公務員法は上司の職務上の命令への忠実義務を求め、国民への奉仕がしばしば後回しになることが指摘されている。国民への差別発言でまず首相に謝るのはその典型だろう
▼国連開発計画(UNDP)の岡井朝子危機局長が日本企業に人権侵害防止へ積極性がなければ「欧州市場から締め出される」と警告した。「スポーツと人権は別」とする日本は人権問題に消極的だと、サッカーのワールドカップで批判された
▼日本の人権感覚が国際的に見てどうかは、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数が146カ国中116位であることでも分かる。障害者権利条約の国連の対日総括所見が昨年9月公表されたが、精神障害者への強制収容や、特別支援学校・学級などへの障害児の囲い込みなどに懸念が表明され、国内感覚との著しい違いが鮮明になった
▼元秘書官発言は同性婚の法制化について「社会が変わってしまう」と国会答弁した岸田文雄首相の真意を解説する中で起きた。「僕だって隣に住んでいたら嫌だ」というのは「首相も」の前提が省略されていると受け取られかねない
▼異例の素早い更迭はふりかかる火の粉から一刻も早く遠ざかる狙いがあったのかもしれない。