伊勢新聞

2023年2月1日(水)

▼「気更来也」(冬を越し、陽気がさらに増す)―と津市が生んだ国学者谷川士清の著書「日本書紀通証」にあるという。2月の古名「如月」の有力な語源の一つとされる。流布されている「衣更着」で、寒くてもう一枚着る、の意は旧暦の2月が現在の3月中旬から4月を考える合わないと言われる

▼今年は10年に一度の大寒波とされ県内でもいなべ市の断水やスリップ事故の多発などの爪痕を残した。寒気は去ったようだが、3日が節分で、翌4日は立春。さあ春ですよという気持ちにはなれない。節分とは「季節を分ける」ことで、一年を24節気に区分したうちの立春、立夏、立秋、立冬の四季の前日を指したが、立春の節分だけが特別な暦日として残る

▼一年で一番夜の長い冬至が12月下旬。一陽来復と呼ばれ、この日で冬が終わり、ゆっくり春に向かう日とされる。小寒、大寒を経て新年、すなわち迎春となり、2月は節分、立春。三寒四温を繰り返し、昼と夜の長さが同じになる3月下旬の春分に至る

▼実際の感覚の先へ先へと進んでいくのが特に春の節気である。「春や来し年が行きけん小晦日」は立春が年の暮れ12月29日に来たことを詠んだ芭蕉19歳の句。旧暦では節気は早まり、新年が来たのか旧年が去ったのかと言葉遊びをしている

▼「春」は感覚に合わせるのではなく、春に定めたから春になる。寒気の中に春を感じ取るのが日本人の越冬の知恵だった。士清の「日本書紀通証」は「言生気更発達」(生気さらに発達)と続く

▼気持ちを切り替えて新しいことを始める時、の意味に通じる。