伊勢新聞

<まる見えリポート>県庁は人事の季節 総務部長が最大焦点、人事VS財政対決か

三重県庁は人事の季節を迎えた。本年度末での退職予定者は8人。来年度に「観光部」が設置されるなど部局の組織改正が予定されている。その中で、人事の焦点は総務部長と見られる。同部は例年候補者の「当確」が予想しやすいが、今回は「ぴたりとはまる人材がいない」(庁内)という異変が起きている。そのため、重要ポストを含め部長級人事レースは混沌(こんとん)とした状況。令和5年度幹部人事を展望する。(年齢は3月31日現在)

60歳定年を迎えるのは安井晃戦略企画部長▽高間伸夫総務部長▽中尾洋一医療保健部長▽長崎敬之病院事業庁長▽坂三雅人議会事務局長▽紀平益美監査委員事務局長―の6人。また、1年定年延長した日沖正人危機管理統括監(61)、任期満了を迎える木平芳定教育長(62)の退任も見込まれる。

危機管理統括監の日沖氏後任は山本英樹防災対策部長(59)、清水英彦東京事務所長(58)、野呂幸利雇用経済部長(59)の名前が上がる。清水氏は、山本氏が就任した場合の後任の防災対策部長にも名が上がる。いずれも防災や危機管理部署の経験者。門外漢だが決断力があるとして更屋英洋農林水産部長(59)を推す声も。

同ポストは鈴木英敬前知事が部局長より格上の〝四役”として新設し、事実上の副知事の前任ポストとして位置づけられていた。ただ、昨年夏に一見勝之知事が就任し、新体制に移行する中で、知事は実質的に四役としての位置づけを解消したとされ、「副知事前任ポストという考えはもはや存在しないだろう」(幹部職員)と見られている。

そのため、副知事就任込みで「エース中のエース」が就くとされた同ポストの相対的地位の低下が見込まれ、存続にも黄信号がともる。一見知事は危機管理に精通し、防災対策にも熱心とされるが、前治世をそのまま踏襲するかどうかは別の話か。

今回人事の最大の難所は総務部長。同部は財政と人事の2ルートあるが、ここ10年以上、「予算が分かる」財政畑出身者が就任してきた。ただ、一朝一夕では成り立たず、若手時代から人材を囲い込み育成。その該当者らが一部ルートを外れたことにより、異変が生じている。

同部長は重量級ポストのため、次長級からの昇格でなく部長級からの横滑りが伝統。その上で、現行部局長を眺め回した場合、財政畑出身の適任者が不在という事態になっている。

そこで、現部局長の中では後田和也地域連携部長(57)が有力との声。後田氏は人事課長や人事担当の副部長を務め、申し分のない経歴の持ち主。仕事が出来るのは庁内も認めるところだが、何より一見知事の信が厚いとされ最右翼に浮上。

ただ、ここへ来て非財政畑の部長就任に「ノー」を突きつけているのが財政組という。高間部長以下、その危機感は相当強いと見られている。部外でも、特に事業部からは「予算が分からない部長では不安」(中堅職員)との意見が出ており、財政畑出身の部長就任が熱望されている。

そんな中、浮上しているのが財政担当の松浦元哉総務部副部長(56)。松浦氏は庁内でも「エース中のエース」との呼び名が高く、次長級からの昇格候補でも筆頭で名前が上がる。能力は高いとされるが酒席での豪快エピソードもある。通常なら部長級で一カ所経由してからの就任が筋。が、大抜擢となれば「服部さんが危機管理統括監に就任して以来の衝撃」(幹部)か。

総務部は来年度の組織改正で北川県政以来、二番手、三番手だった建制順で筆頭部に返り咲く。そんな重要な節目を迎える中、人事VS財政の真っ向対決も見所となっている。

一見知事は来年度に組織改編に着手し、県議会2月定例会に県部制条例の改正案を提出予定。戦略企画部を廃止して政策企画部を新設するほか、地域連携部を地域連携・交通部に、雇用経済部観光局を廃止して独立した観光部を新設する。

安井氏後任で、戦企部を踏襲する政策企画部長は企画畑出身の高野吉雄四港経営企画部長(58)、中野敦子環境生活部長(58)の二択か。部内では中野氏を望む声が多いとされている。

部長級からの横滑りが通例の議会事務局長には佐脇優子出納局長(58)、山本防災部長、清水東京事務所長、高野四港部長らの名前が上がる。特に議会事務局筋からは佐脇氏の名前が出ている。

中尾氏後任の医療保健部長には小倉康彦同部理事(59)か。小倉氏の後の同部理事には井端清二同部副部長(59)が昇格か。長崎氏後任の病院事業庁長には、総合医療センターなどに派遣経験がある河北智之同副庁長(57)が昇格するか。

また、新設の観光部長には増田行信観光局長(59)がそのまま就任か。

木平氏後任の教育長人事も混沌。通常、部長級経験者から就任するが、現行部長の中で最適人物がいないとの声。そこで、次長級だが教員出身の上村和弘副教育長(57)の名が上がるほか、県教委事務局次長を務めた中野環境部長の声も。

来年度に組織改正が行われ、一見知事の人事が本格化する。一方で、組織改正は事実上の名称変更との見方も色濃い。「交通」の特出や観光の部昇格などが「一見色」とも言えるが、「知事出身の旧運輸省の所管絡みが目立つ」(元幹部)との意見が出ており、存在感発揮にはほど遠いもようだ。

ほかに次長級からの昇格組として、山本秀典戦企副部長(58)、竹内康雄地連副部長(57)、枡屋典子農水副部長(56)、松下功一雇用副部長(56)、山本健次県土副部長(58)、杉野京太桑名地域防災総合事務所長(57)などの名前が上がる。