三重県立大の設置を巡り、県は26日の県議会戦略企画雇用経済常任委員会で、本年度内を予定していた設置の是非に関する判断を来年度に持ち越すと報告した。費用対効果などについて、有識者の意見を聞く必要があると判断したため。委員からは判断のスケジュールが遅れることへの批判が相次いだ。
県によると、費用対効果は県内事業者を対象に実施した採用希望人数に関するアンケートの結果などを基に試算。学生や県内就職者による消費と、開学から25年間で県立大に必要な経費を比較した。
県内就職者の消費は最大で経費の3・1倍に上った一方、最少は0・8倍で経費を下回った。学生の消費は経費の1・4―2倍。学生1人の県内定着に要する費用は1500万円から6千万円と算出した。
県は常任委で、これらの試算に大学に関する国の施策や県内大学の動向などを加味して「慎重に検討する必要がある」と説明。有識者に意見を聞く費用として約40万円を来年度予算に計上する考えを示した。
県は本年度内にも聴取する有識者を選ぶ方針。令和3年度に設けていた県立大に関する有識者会議とは異なるメンバーとする予定。財政や大学経営、県内経済などに詳しい有識者を想定しているという。
小林貴虎委員(自民党、1期、津市選出)は、この日の常任委で判断の報告を受けるはずだったと指摘。「有識者の声を聞く必要があるのか。甚だ疑問」とする会派内の意見を紹介し、早期の判断を求めた。
また、三谷哲央委員(新政みえ、7期、桑名市・桑名郡)も「スケジュールの約束が守られていない」と批判。濱井初男委員(同、3期、多気郡)も「いつまでも決められない事態は避けてほしい」と訴えた。
これに対し、安井晃戦略企画部長は「これまでの検討が足りなかったのかもしれない」としつつ、県内の大学に学部を再編する動きがあるとした上で「それによって判断の選択肢が変わる」と理解を求めた。
また、山本教和委員(自民党、9期、志摩市)は田川亮三知事時代の世界祝祭博や野呂昭彦知事時代の博物館建設に比べて「執行部が前向きな姿勢で議会に提案する雰囲気が感じられない」と苦言を呈した。