【鳥羽】三重県鳥羽市は人口減少や高齢化が進む同市の有人離島4島で、ICT(情報通信技術)など新たな技術を活用した高齢者の見守りや、オンラインによる診療・服薬指導の実証調査を行っている。
全国の離島地域が抱える課題解決に向け、国土交通省が進める「スマートアイランド推進実証調査」の一環。市は令和2年度にもICTを用いた実証調査を行い、クラウド型電子カルテや遠隔診療支援システムを導入し、複数の離島が連携した効率的な診療体制の構築などに取り組んだ。
今回行うのは前回の実証調査以降、市が進める「TRIMetバーチャル鳥羽離島病院構想」の一環として、離島の各住居を「サービス付き高齢者向け住宅」と見立てた実証調査。
人口減少や高齢化が進むことで島民同士のつながりが希薄化し、閉じこもりがちな高齢者が増えていることから、生活支援や医療介護の体制を充実化させ、離島の高齢者を孤立させない取り組みを2月末まで調査し、3月に報告書を提出。実施主体としてセコム医療システムを代表とし、志摩医師会や鳥羽志摩薬剤師会、セコムと市が共同で推進協議会を設立した。
調査では、コミュニケーションロボット「BOCCO emo(ボッコエモ)」を管理人として、見守り支援が必要と医師が判断した一人暮らしや夫婦の高齢世帯10軒(神島7体、坂手島・菅島・答志島各1体)に設置した。
ボッコエモを通じ、セコムスタッフが高齢者の生活リズムと暮らしぶりに合わせて日常会話や注意喚起を行い、誰かとつながる安心感を提供。高齢者からも「いつでも話し相手がいるので夜も寂しくなることはない」などと好評だ。
見守りとして医師や集落支援員、民生委員らも高齢者とボッコエモ(セコムスタッフ)との会話を把握し、異変を感じた場合は集落支援員らが自宅を訪ね、医師に連絡する。また、神島ではセコム・ホームセキュリティの各種センサーを活用し、自宅での活動量や温湿度などの状況をクラウド経由で可視化し、見守り側はアプリ上で確認できる。
生活圏に診療所がない答志島・答志町の島民は、島内の桃取診療所まで出かけて診察を受けていたが、オンラインによる診療・服薬指導を行うことで患者の負担軽減を図る。閉鎖した診療所内にオンライン診療室を設けて患者には看護師が付き添い、モニターを通して桃取診療所の医師の診察を受ける。薬剤師からの服薬指導後、薬は自宅に配送されるという。
前回から市とともに調査に取り組む、神島診療所の医師、小泉圭吾さん(45)は「この先、離島の医療に関わる人は少なくなってくる。医師が少なくても離島全体をカバーできる体制づくりをしていきたい」、市健康福祉課の中村孝之係長は「今後も試行錯誤しながら、住民の満足につながるように引き続き取り組んでいきたい」と話した。