伊勢新聞

「まる三重リポート」求む高校生力士 部員数減少問題に直面、掘り起こしに知恵絞る

【おいしそうに出来上がった手作りちゃんこを撮影する相撲部のマネジャーら=伊勢市黒瀬町の宇治山田商業高校で】

今年の大相撲初場所前に力士数の減少が話題になったが、三重県内の高校相撲部も部員数減少の問題に直面している。少子化、新型コロナウイルスの影響に加えて、過酷な増量などのイメージから敬遠される場合も。現場では若い指導者らが戦力の掘り起こしに智恵を絞っている。

県立宇治山田商業高校(伊勢市)の相撲部は昨年、写真共有アプリ「インスタグラム」の公式アカウントを開設した。週末のある日には、けいこの後、部員らに振る舞われるマネジャー特製のちゃんこを撮影して投稿した。

更新も主にマネジャーらが担当する。ちゃんこも最初は静止画のみのアップだったが「動きのある映像の方がおいしそうに見える」と生徒らの発案で、近頃は動画で撮影したものを上げている。

何気ない日常を切り取った投稿内容に奇をてらったものはない。東洋大時代全国学生選手権3位などの実績を引っさげて郷土で後進の指導に当たる津市出身の下里匡希教諭(35)は「まずは相撲部を知ってもらうことが大事」とその意図を話す。

背景には競技人口減少への脅威がある。昭和26年から始まった県高校総体の第1回目の参加校が10校だった相撲だが近年は減少の一途。昨年参加したのは宇治山田商と明野の2校だけ。それでも下里教諭は「2校を維持するのも大変」と打ち明ける。

県高校総体団体戦で平成30年まで22年連続優勝を誇り、過去全国チャンピオンも輩出している同校も部員は3学年で6人。「どこで相撲をやっているかをまず知らない人が多い」と現状を憂い、SNS(交流サイト)も駆使して、「活動していることを伝えていきたい」と話す。

県外出身の指導者も本県の相撲人口増に貢献している。今年度県高校総体の団体戦で宇治山田商に続く2位の県立明野高校(伊勢市)では、4年前、国体選手兼新採教員として赴任した新潟県出身の佐藤崇教諭(27)が部員3人の相撲部を切り盛りしている。

経験者1人を除けば、全員が高校入学後、佐藤教諭の勧誘に応えて相撲を始めた。部活動を紹介する冊子に加えて、極端な増量に抵抗感を持つ今時の高校生に向けて準備した佐藤教諭の口説き文句が「無理に体重を増やさなくても良い」。

毎年3月に開催される日本相撲連盟主催の全国高校選抜は軽量の選手も出場できるよう、体重別の個人戦が設けられている。無差別級のみの実施だった全国高体連主催の夏の全国高校総体も2年前から80キロ未満級と100キロ未満級を導入した。

このため、軽量級で全国大会出場を狙うため、あえて減量を勧めることもあるという。全国高校選抜の県予選を兼ねて開かれた昨年秋の県高校新人大会では80キロ級で明野の選手が優勝を果たした。

新潟県の能生中、海洋高で全国の表彰谷に登る経験を積んできた佐藤教諭。その実績を買われて日本体育大卒業後、三重県の公立高校の教員になった。

目標としてきた三重国体は新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれたが、国体を機に第二の故郷になった三重で「県内全体の高校が協力し全国ベスト8、ベスト4を狙える県にしていきたい」と話している。