元教授に有罪判決 三重大病院贈収賄事件、津地裁

三重大医学部付属病院を巡る贈収賄事件で、第三者供賄と詐欺の罪に問われた元臨床麻酔部長の亀井政孝被告(56)=大阪市天王寺区=の判決公判が19日、津地裁であった。柴田誠裁判長は一部無罪とする弁護側主張を退け、懲役2年6月、執行猶予4年と、被告が代表理事を務める一般社団法人への追徴金200万円(求刑・懲役4年、追徴金200万円)の判決を言い渡した。

柴田裁判長は判決理由で、製薬会社の小野薬品工業(大阪市)に関する第三者供賄と詐欺について、「寄付金を獲得するためになりふり構わず処方量の増大に突き進んだことは異常というほかなく、職務の公正さやそれに対する社会の信頼を害した程度は大きい」と指摘。「処方量の増大に突き進んだ結果、使用されずに廃棄される医薬品が大量に生じるというゆがみが発生し、診療報酬の詐取につながった」と非難した。

医療機器メーカーの日本光電工業(東京都新宿区)に関する第三者供賄については、「医療機器の入札に関して強い影響力を有する地位や立場を背景に、賄賂の提供を強く要求して渋る相手に賄賂を提供させたのは悪質」としたうえで、被害弁償に備えている点などから執行猶予を認めた。

これまでの公判で、弁護側は日本光電工業に関する第三者供賄の事実は認める一方、小野薬品工業に関する第三者供賄とそれに付随する詐欺の事実は無罪を主張。小野薬品による三重大への寄付金と、同社が提供していた薬剤「オノアクト」の使用との対価性が大きな争点となっていた。

判決では、亀井被告の臨床麻酔部教授就任以降にオノアクト処方量が急増していた点と、亀井被告が寄付金を要求していたとする贈賄側社員の供述の信用性、寄付の約束を前提に処方量増加のための「積み上げ」作業をしていた点などを挙げ、「請託の存在を認めることは十分可能で、被告人が対価性の存在を認識していたことも優に認められる」と認定。「請託や対価性はなく罪の故意を欠く」とする弁護側の主張を退けた。

判決によると、亀井被告は小野薬品工業からオノアクト受注の見返りに、寄付金名目で200万円を三重大の口座に振り込ませたほか、元准教授と共謀してオノアクトを投与したように装い、診療報酬計約81万円をだまし取った。また日本光電工業への便宜の見返りに、自身が代表理事を務める一般社団法人の口座に現金200万円を振り込ませた。

被告側の代理人弁護士は判決について、「不当な判決。被告人と相談して適切に判断する」と述べた。

三重大医学部付属病院の池田智明病院長は、「在職中の行為で元教授に有罪判決が下されたことを真摯(しんし)に受け止め、地域の信用を失墜したことを深くおわび申し上げる。組織体制や管理体制の見直し、コンプライアンス徹底などの再発防止策に取り組んでおり、今後も信頼回復に向けて全力を尽くす」とコメントした。

一連の贈収賄事件を巡っては、これまでに亀井被告を含め元准教授や贈賄側の社員ら八人を逮捕、起訴。うち7人に執行猶予付き有罪判決が下されている。