▼剣が峰、いわゆる土俵際で懸命にこらえていたが、ついに押し出された。そんな連想をさせる「医療ひっ迫防止アラート」の発令である
▼病床使用率60%を目安としながら「まだその時期ではない」と先送りしてきた一見勝之知事である。昨年12月の東海3県知事会議では「なるべく早く抑え込む」と強きの一見知事だが、すでに医療ひっ迫防止対策強化宣言を出していた岐阜県の古田肇知事は「緩みがある」と指摘した。特に救急搬送困難事案の計上について「(三重は)コロナ関連の患者に限定している」
▼それから1カ月。県は直近1週間の救急搬送困難事案が第7波の最大を超え、23件に上ったと、アラート発令の理由にあげた。「たらい回し」の悪夢が再来していた。「潮目が変わった」と一見知事。が、どちらが現実に近かったかは明らかだ
▼「感染力はすごく強いと聞いているが、重篤化率は低いと。やがて収まってくるのではないか」と5日の年頭会見で「希望的観測」としながらも、そう言って翌々日台湾に旅立った。「当時は収まる可能性があった」というのが帰県会見。わずか1週間で、すっかり変わった潮目を目の当たりにしたということだ
▼帰県した11日は過去最多死者数19人という現実に迎えられた。その後も2ケタ台が続く。重篤化率がどうあろうと、死者数がケタ外れなことは周知の事実。「感染力は強いと聞いているが」などと余裕を見せている場合ではない。「潮目」なるものの見方は新たな敵を迎えとっくに変わっている
▼後手後手もだが、生兵法も、大けがのもとである。