伊勢新聞

2023年1月14日(土)

▼住友林業が津市白山町内で進めている風車建設計画を中止した。稼働後の騒音が国の指針を超える可能性が浮上したためだが、単一の課題だけで既に建設した風車の撤去も進めるという全国的にも珍しい決断に踏み切るかどうか。林業を基盤にする企業として、風車建設との整合性に配慮した結果と思いたい

▼同社の計画は、同町垣内南布引の社有林などに四基の建設を計画。一昨年7月から工事を進めたが、現場から1キロほどの住宅地「青山高原保健休養地」の住民ら約40人が反対団体を結成し、騒音などによる健康被害を訴えていた

▼布引山系はほかに風力発電施設もあり、拡大する計画。4基がそれら計画分も含めて自然環境にどう影響しあうか。環境影響調査では分かるまい。松阪市飯高町では日本最大級の建設計画が進む。原発事故以降、再生エネルギー時代の声とともに、国の後押しを受けて建設計画が山積。県にも太陽光発電とともに殺到した

▼産廃処理場やリゾート施設などで何度も体験した現象。ゴルフ場の建設計画などは、県の面積を上回りかねない申請になったのではないか。反対住民の住む「青山高原保健休養地」は、県企業庁が別荘ブームに便乗して手がけた分譲地ではないのか

▼四日市公害を避ける住民に用意した住宅地の横に北勢バイパス計画ができ、住民が猛反対したことを思い出す。紙パルプ事業でカナダに進出した日本の製紙会社が長い操業歴史の末撤退した。初めは喜ばれたが、その後公害問題で住民と敵対する関係になったからだという

▼経済原則だけで動かない企業は心強い。