住友林業が三重県津市白山町内で進めている風車の建設計画を取りやめる方針を固めたことが12日、同社などへの取材で分かった。稼働後の騒音が想定を超える可能性が浮上したためで、既に建設した風車の撤去も進める方針。周辺環境への影響を踏まえて着工済みの風車を撤去するケースは全国的にも珍しい。
同社は当初、同町垣内南布引の社有林などで風車4基(7・49メガワット)の建設を計画。自主的な環境影響調査や固定価格買い取り制度の認定を経て令和3年7月に着工し、昨年3月の運転開始を目指していた。
一方、風車から半径約2キロ圏内に住む約40人でつくる住民団体は、騒音などによる健康被害を懸念し、同社に建設中止を要請。同社は同年11月、工事を一時的に停止すると住民らに通知していた。
同社が昨年11月に騒音予測の再調査を実施したところ、一部の地点で騒音が国の指針を超えた。説明会で上がっていた住民の意見や事業の採算性なども含めて再検討し、計画の取りやめを決めたという。
同社は9日付の文書で住民らに計画の取りやめを通知した。中部経済産業局に対し、近く取りやめを報告する予定。住民説明会などを経て、原状回復に向け、設置済みの支柱などを撤去するという。
住民団体のメンバー、高須梓さんは取材に「長く抱いていた不安が解消され、ほっとしている。住民の意見に耳を傾けてもらった結果だと思う。速やかに風車を撤去して景観を戻してもらいたい」と話した。
同社のコーポレート・コミュニケーション部は「工事をいったん停止して一年が経過した中で、住民の心配を解消すべきと考えた」と説明。風車の撤去時期は「行政や住民と相談して決めたい」としている。