伊勢新聞

2023年1月4日(水)

▼「去年今年(こぞことし)」は新年の季語。高浜虚子の「去年今年貫く棒の如きもの」が代表的句とされる。大みそかから元旦へ、一夜を境に年が改まったとして気持ちも一新するが、時は変わることなく流れている。自分の信念も固い棒のように曲がらない、という趣旨か

▼現代は、むしろ区切りをつけようとする考え方の方が少数派の気がするが、一方で早々に区切りをつけたいという思いは広がっているように思える。旧統一教会問題は国、地方をあげてそうだろうし、県では、津市の自治会問題や競艇CM収賄事件、南伊勢町の巨額横領事件など

▼昨年末の本紙企画『一年を振り返って』は巨額横領事件で前町長の責任に触れていた。いつぞや福祉法人で補助金不正受給が相次いだことがある。「(県OBの)○○が行ってるんだろう」と監査委員経験のある県OB。何と言う恥ずべきありさまだというニュアンスだった

▼県職員時代は財政畑など歩んだ前町長にも当てはまろうが、町にそんな考えはないように見える。RDF貯蔵槽事故で、議会の同調査特別委員会に参考人招致された前知事の北川正恭氏は自身の責任問題で、事業に多くの人が関わっていること、事故後の調査について知らされていないことなどをあげ、言及を避けた。前町長の責任を問うには、町自体のさらに詳細、広範な調査が前提になろう

▼前町長の退任で、一時は県市町村の大半の首長を席巻するいきおいだった県OB出身はいなくなった。今年の県議選、首長選に名乗りをあげる新人に、県OBは見当たらない。県職員の棒は柔らかい。