伊勢新聞

2022年12月26日(月)

▼津市の前葉泰幸市長には「今年の一字」などに気はないようだ。もともと漢字能力検定協会が知名度を高める一環としてその年の世相を一字で表現する漢字を募って京都の清水寺で発表し、同寺の貫主が和紙に大書したのが年末の風物詩として定着。自治体の首長なども真似をするようになった。知事が始めたのはいつごろからか。鈴木前県政からと言われると、いかにも、という気はする

▼前葉津市長は軽いノリの試みに似合うタイプではない。が、似合わぬこともあえてやろうとしているフシもうかがえるが、一字で一年の世相が表せるかと思っているとしたら同感。「金」とか、今年の「戦」などは、年の最後に不快な思いをだめ押しされた気になる人もいるのではないか

▼だからというわけではないが、二字ならどうか。前葉市長に贈る二字を考えたのは大きなお世話だが、「明暗」がふさわしいと今年の十大ニュースを発表する同市長を見ながら思った

▼1位「市地域脱炭素宣言」、2位に湯の瀬新築オープン、コロナ、物価高騰支援策、ふれあい会館新築、広域避難計画の策定など、華々しい成果を続けながら、会見で多く語ったのはそれらとは異なる競艇CM収賄事件であり、自治会問題を受けて設置した内部統制室がここでも大活躍していることを明らかにした

▼11月の4選出馬でも、実績と経験をアピールしながらも、自治会問題について「市長として行き届かなかった」と陳謝せざるを得なかった。光の中に闇がつきまとった一年だった。「内部統制室」という組織名とともに、そのことを象徴する。