伊勢新聞

2022年12月21日(水)

▼いまNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』主演で話題の小栗旬さんに、昔テレビのトーク番組で演出家蜷川幸雄さんが「アニメが原作だと創造の範囲が少ないんじゃないか」の趣旨の質問をしたことがある。そんな作品への出演が決まっていたらしい。「いや、結構ありますよ」というのが小栗さんの返答

▼マンガは教育に悪影響があるとして子どもに禁止する親が多かったのは今は昔。歴史も文化も、化学理論さえマンガが教える時代だ。その差が蜷川、小栗両氏のやりとりにある気がした。活字に比べて、マンガは読者の想像力を狭めるというのはかつての識者の信念。確かに絵は内容の理解を助けるが、イメージを固定もさせる

▼マンガ『鬼滅の刃』が昨年初めまでの累計販売部数が1億5千万部で不況の出版界をけん引し、アニメも空前の人気。日本の代表的文化財とされキャラクターへの思い入れも強く、かつて『あしたのジョー』の敵役、力石徹の葬儀が実際に行われた当時をしのぐ

▼そんな中で、亀山市は来年1月、再開発が進むJR亀山駅前に新図書館を開館する。図書館と言えば中心街から少し離れた静かな緑陰公園の中というのが古い世代の感覚だが、図書館喫茶などという敵同士のようなコラボも珍しくなくなっている。新時代の活字文化の継承を探るようで、心強い

▼元総務相の片山善博氏が「知の地域づくりと図書館」の題で講演した。「人間が考える力を養うために重要なのは『読解力』を身に付けること」。借り物を極力排除した自前の思考を磨くことが情報操作の時代に必要ということだろう。