伊勢新聞

2022年12月11日(日)

▼少子化や過疎化で教育施設の適正配置が検討される中で、多くの教育行政担当者は初めは異口同音に「統廃合ありきではない」と言うが、その言葉通りになったことはほとんどない。県教委の木平芳定教育長も「統合の結論ありきで協議せず、地域の実情に応じて丁寧に進める」

▼木本、紀南両県立高校のあり方を問うアンケート調査が紀南地域中学生、保護者に実施された。統合に関する質問は保護者だけ対象で、結果は44・6%が二校統合を選択。二校併存は35・9%だった。統合ありきのアンケートではなかったか

▼「令和七年度に地域の全日制高校一年生の総学級数が現在の六学級から五学級になる」と設問は決定的前提をまず植え付ける。あなたはどうするのがいいと考えるかと問いかけ、四択を示す。第一が二校統合で第二、第三が二校統合して本校と分校に分ける。学級数が第二は四対一、第三が三対二。第四は「統合せず」だ

▼複数選択に対する回答者心理というのがある。極端な一と四は外し、二と三から希望に近い方を選ぶ。どちらも統合にカウントされるが、「本、分校案」を二校案に加えると、一校と二校案がほぼ半数ずつになる仕掛け

▼「地域の実情に応じて丁寧に進める」という木平教育長の方針が、保護者だけのアンケートで十分足りるとしているのも気になる。アンケート結果を踏まえた紀南地域高等学校活性化推進協議会の会議では「15年先をみすえた視点」も提唱された

▼児童生徒が増えたら学校を建て、減ったら閉鎖する、というこれまでの教育行政ではなくということでもあろう。