伊勢新聞

2022年12月4日(日)

▼南伊勢町の巨額横領事件で、同町は第三者の弁護士による外部監査の結果を報告した。横領した本人と上司ら5人に損害賠償を求めるべきとする結論は当然だ。金額が約1億6850万円で、単純計算すると1人当たり3370万円。完済までには曲折もあるのではないか

▼事件関係で、町は内部調査の終了にあわせて町長の給料を6カ月間30%減額、副町長や教育長も3カ月間。ほかに上司ら8人を懲戒処分としたが、今回の報告を受けて、町総務課は「見直しや検証を進めている」

▼外部監査報告は、企業出納員が横領した元職員より責任は重いとし損害額の30%の返済を負うべきとしている。公務員の過失責任については、個人に問えないとする佐川元理財局長に対する大阪地裁の判決もある。最終報告が今後、まだあるのかどうか

▼県の巨額カラ出張問題では、課長級以上の連帯責任として一律弁済の形をとった。期限までに横領金額を自主申告すれば責任を問わないとし、それ以降に判明した場合は法的処置を取るとのムチともアメとも判然としない措置を当時の北川正恭知事は取った

▼私もやりましたと続々申告された半面、なぜ自分も返済をと、犯罪に加担したかの扱いに割り切れぬ思いを抱いた職員もいた。OBも組織的に寄付を申し出て、早期に完済した半面、事件そのものをうやむやにしてしまった。会計処理を巡ってそれからも問題が5月雨的に発生したのは、きちんと過去を清算しなかったせいもある

▼町は監査委員に報告書を提出し賠償などの判断を仰ぐ。県のわだちを踏んではなるまい。