伊勢新聞

2022年11月22日(火)

▼これまでの知事定例記者会見の形を変え、知事の「政務」なるものは別に「懇談の場」として設けるという一見勝之知事提案が15日から始まっていたらしい。会議録もとらず、ネット配信もしないという。時計の針が20年ばかり逆回りしたかのような試みである

▼会議録というのが、AI導入で簡便になったはずが、一向に変わりなく4、5日かかっているので分からなかったが、同日の会見で報道陣とのやりとりが記録されている。何が「公務」で、何が「政務」かは、知事は知事の主張をし、記者側は記者側の判断を示し、合意には達しなかった

▼知事は制度的に政務と公務の一人二役が決められている。分けること自体が難しく、また意味がある気がしないが、前知事が参院選で特定候補の応援をして、対立陣営などから非難された時に「これは政務だ」と言ったように、便法とし使うには便利な考え方かもしれない

▼47都道府県のうち、知事会見を分けているところはどれくらいか。記者クラブの一記者が電話調査した結果、大阪府だけだった。そう言ったら、知事は「名古屋市は?」と聞き返した。都道府県ではないが、名古屋がそうしているのは参考にしたのだろう

▼知事によると、国にも分ける例があるらしい。「議事録を作ってはいけないということではないと思う」「とりあえずやって」「別のやり方があるということであれば、そちら」と相変わらず融通無碍(むげ)、軽い

▼報道「記事になるとは限らないが」。知事「そうです、そうです。必ずしも書いてもらいたいと思っているわけではないので」。