▼コロナ関連補助金を不正受給したとして、県は伊勢市の旅館業者を伊勢署に告訴した。新型コロナの感染防止対策に必要な設備投資を補助する制度を利用し、業者は換気機能付きエアコンなど、施工していない設備まで申請していた。別の施設の写真を添付するなど「悪質」として告訴したというのはもっともだ
▼同制度による不正受給は県内初という。が、コロナ関連補助金の詐欺・不正受給は県内でも実に多い。驚いたのは家族ぐるみで持続化給付金約10億円を不正受給していたとして一家4人が逮捕された事件。全国から名義人を集め、発覚後は父親はインドネシアに逃亡するなどスケールが大きい。家族だけではないグループの首謀者だなど情報は錯綜(さくそう)した
▼行政絡みが明るみに出たのは先の県議会。コロナ関連の臨時交付金の使途を巡り、県内市町が会計検査院から指摘を受けたという。水道料金の減免対象に公共施設を含めていた。「会計検査院が公表していない」という理由で市町名を明かさないという。行政機関同士のメンツの立て合いなどの古くからのしきたりがあるに違いないが、市町民を救う制度を自分のために利用する。態様は極めて「悪質」だ
▼旅館業者が不正受給した補助金の県内交付総数は500件弱という。再調査したが、不正は確認されなかったというからめでたい。申請や実績報告段階で複数チェックするとしているか、書類審査で発覚するかどうかは心もとない。観光政策課は「偽りや不正には厳正な態度で臨む」。全額返済済みの告訴は、それを効果的に知らしめるということだろう。