2022年11月4日(金)

▼県内三業者の「アサリの産地偽装」を県が発表した時「悪夢のような」と書いたのは県内に吹き荒れた産地偽装、表示偽装がよみがえったからだが、一見勝之知事の記者会見によると、熊本で発覚した当時、県は抜き打ち検査をしていなかった

▼発覚は2月以降で、県が三業者を立ち入り調査したのは5月以降。農林水産省から通報が来てからのことらしい。国など公的機関から連絡を受けると、それまでの重い腰が一変。たちまち過剰なまでに動き出す県の伝統は健在らしい

▼一見知事はまた「熊本県で明らかになったときに、抜き打ち検査をすれば良かったという反省もある」。そうしなかったのはなぜか。説明はないが、かつて偽装の嵐の初期段階で、一向に県が動き出す気配を見せなかったことや、早々におざなりの幕引きを図ろうとした〝悪夢〟もよみがえる

▼一見知事は続ける。「他県で事例が出て疑わしい場合は検査するよう対応したい」「県の海産物は全国的にも評価されている。消費者の期待を裏切るようなことがあってはならない」。後の祭り、十日の菊六日のアヤメ。分かりきったことをしないのには何か理由があったのかと経験則で勘ぐりたくなる

▼近年鈴鹿市漁協ではアサリ漁は復活の兆し。豊漁は「海底耕運と移植放流、産卵期の禁漁による生産調整」が原因という。松阪漁協採貝部会も漁場整備に取り組み昨年、水産庁長官賞を受賞した。産地偽装の一業者は漁不振を理由にあげている

▼知事の反省と裏腹に、他の二業者に動機を聞き取っていない。いわく言い難き理由があるのかもしれない。