伊勢新聞

<まる見えリポート>松阪カルチャーストリート 来月6日からまち歩きと芸術鑑賞

【観光交流センターの企画展で紹介された前回の「松阪カルチャーストリート」】

まち歩きを兼ねた芸術イベント「松阪カルチャーストリート」(伊勢新聞社後援)が11月6日から、三重県松阪市中心部で始まる。街並みを巡りながら、12会場に置いた絵画や立体の作品を楽しむ。会期は同20日まで。初開催の前回に続きコロナ禍対策の補助金を受け、会場、作家数とも増えた。約40年前の松阪彫刻シンポジウムも「アートで町を元気に」の取り組みで市内各所に遺産が残る。

イベントは昨年11月に初めて開いた。同市中町でギャラリーMOSを併設する松本紙店が主催し、豪商旧宅を管理運営するNPO松阪歴史文化舎、同市観光協会、同市が共催する。豪商宅や寺院、カフェ、ギャラリーに、地元ゆかりの作家をはじめプロの芸術作品を飾り、市民や観光客に松阪とアートの魅力を同時に感じてもらう。

会場は同市魚町に5月開館した私設美術館「サイトウミュージアム」など、前回に比べ2施設増えた。出品作家も3人増え28人。メイン会場は旧長谷川治郎兵衛家、旧小津清左衛門家、原田二郞旧宅の3カ所で、30点以上の作品を展示する。サテライト会場は岡寺山継松寺、ギャラリーカフェうつくしや、pieceピースcafe&storeなど9カ所。

前回に続き文化庁のコロナ禍対策の補助金「ARTS for the future!」を受ける。キャッチフレーズに「松阪の魅力を芸術で再発見」ととともに、「おうちで飾りたい!作家を応援したい!を叶(かな)える芸術祭」を打ち出し、作品を販売して作家の支援につなげる。

松本紙店の松本恵介代表は「場所にマッチ、融合する作品を選定する。『おっ』と思うような作品を見ていただきたい」とアピールしている。

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サイトウミュージアムは精神科の南勢病院(同市山室町)の齋藤洋一院長が集めた近現代絵画を中心とする約3千点を収蔵する。膨大なコレクションを公開するとともに、文化拠点としてまちの活性化に寄与したいとの思いから開設した。

齋藤館長は評価されていない作品の掘り起こしに力を注ぎ、オークションやギャラリーで購入している。「これまでの美術史の主流からこぼれ落ちてしまった作品も数多く含まれる。豊かな近現代美術の再評価を試みることが使命の一つ」と意気込む。

県立美術館に勤めていた田中善明さんが学芸員を務める。「30年近く近代洋画を専門に携わり、かなり分かったつもりだったが、収蔵品の作者は半分以上知らない」と話し、「地味だけど、いつまで見ていても飽きない。個人の感性で鑑賞してほしい」と呼びかけている。

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松阪彫刻シンポジウムは昭和54―58年の5年間、松阪青年会議所と三重大学彫刻研究室、同市が協力して開催。「生活の中に造形を」のテーマで、全国から延べ120以上の制作参加者があり、51作品を公共の建築物や広場、公園に設置した。同市立野町の中部台運動公園や市役所などに残る。

同市観光協会が運営する「豪商のまち松阪観光交流センター」は昨年5月、「松阪中部台運動公園彫刻マップ」を作成した。「彫刻シンポジウムが開催されたことや彫刻作品が市内にあることは、今はあまり知られていない」と再評価を図る。

作品は駐車場から芝生広場、ドリームオーシャンスタジアムへ続く通路を中心に登場し、「えんやこらさ」「虚(うつろ)」などが並び、公園内に17点が点在する。

同センターは今年9月、松阪カルチャーストリートをPRする企画展「アートを楽しもう」を開催。昨年のイベントを写真で紹介するとともに、彫刻シンポジウムを取り上げた。「アートが松阪市の魅力あるまちづくりにつながれば」と期待している。