伊勢新聞

2022年10月28日(金)

▼町民の代表である町会議員らを建造物侵入容疑で書類送検するというのは、警察にとっては軽い事案ではあるまい。発表はおろか、問い合わせにも応じないなどは聞いたことがないが、菰野町議を書類送検した四日市西署がそうらしい

▼代わって、と言えるのかどうか。同町が発表した。送検容疑を詳説しているから、四日市西署からの連絡や、発表の承諾は取り付けた上のことに違いない。説明すべき警察がせず、そんな役目があるわけでない町が肩代わりする。どちらも適正な職務遂行とは言えまい

▼まして、町は町議らを告訴した当事者である。事案は、町の財産ともいえる町役場庁舎に、町民の代表であり、町に対する調査権も担う町議が、庁舎の管理者である町長の許可なく、制止も聞かず立ち入ったという微妙な問題。告訴を受理するという判断とは裏腹に、四日市西署は問題を狭い範囲に絞り、大ごとにはしたくない心情がにじみ出ていないか

▼背景には、5月の役場敷地内での「ぼや」があるという。追及する町議と真相を明かそうとしない町長との間に過去の確執も含め対立があり、取材する新聞記者ともども告訴した。被害届も出されず、蚊帳の外だった警察が受理した

▼昔、汚職事件を捜査する県警二課の幹部が桑名署長に栄転し「これからは市長ら幹部と仲良くしなければならない」と苦笑していた。町長の告訴に、四日市西署が対応にあぐねたことは想像に難くない

▼町と警察の闇か。憲法問題などにならず、津地検が不起訴にしてくれることを四日市西署はひたすら願っているのかもしれない。