2022年10月21日(金)

▼都会で落ちぶれて帰郷した妹を兄がことごとくつらく当たり、初めは色眼鏡で見ていた村人だが、同情が妹に集まり、受け入れられる、という室生犀星の『あにいもうと』小説がある。小林貴虎県議を対象に提出された辞職勧告決議案に対し、反対討論をした津田健児県議が「本当に大ばかやろうだ」と批判した。兄貴分として、思うことは同じか。決議案は賛成少数で否決。結果に討論は成功した

▼小林県議が同性カップルの住所を公開して問題になった時も、津田県議は同人の人権感覚を非難しながら、各方面への謝罪に同行した。オオカミ少年ではないが、効果はやや薄れたかも知れない

▼公明党の二人が開催実績のない政治倫理審査会(政倫審)開催を主張して議場を退席し、賛否は一票差。票読みはぎりぎり詰めただろうが、薄氷の結果で、自民と一枚岩の行動は取れなかった

▼辞職勧告決議案は、共産党の萩原量吉氏が収賄罪で起訴された水谷典昭に対し、昭和57年に提出した以来という。防災センター汚職事件である

▼自民党の絶対多数の時代。否決は当然だが、裁判も一審有罪で控訴。翌58年県議選で萩原県議落選、水谷県議は当選をはさむ二審審議中に控訴を取り下げ、刑が確定。昭和62年に第80代議長となり、任期中に死去した

▼新政みえの三谷哲央副代表は「良識ある判断よりも政党の内向きな論理が優先された」。繰り返されたと言えるかもしれない。情報源などを「引き続き追及する」とも。議会全体の受け入れには、ほど遠いということだろう

▼事実は小説よりも奇なり、である。