2022年10月16日(日)

▼実名匿名を巡る報道で、驚いたのは福田康夫官房長官(当時)の発言だ。核兵器保有問題で「政策判断としてやめている」と答弁した後、政府首脳発言として「(将来)国民が核を持つべきだということになるかもしれない」という逆方向の見方が報じられた。発信元はどちらも福田官房長官だった

▼官房長官と記者らとの間で発言の趣旨などを説明するオフレコ前提の場がある。そこでの重要発言は「政府首脳」と匿名にして伝えるのが慣行だと知った。発言の趣旨を誤らず報道する仕組みだと感心しつつ、読者を混乱させる弊害も感じざるを得なかった

▼非核三原則を見直す方向か、単なる説明かは分からずじまいだったが、オフレコの仕組みを伏せたまま報じたからだろう。小林貴虎県議が国葬に絡み「反対のSNS発信の八割が隣の大陸から」などとツイッターに投稿した問題で、県議会代表者会議で事の真偽を問われ、すべてを誤りだと撤回し、会議が非公開だったことを理由に、一切の説明を避けた

▼講演した高市早苗経済安全保障担当相がまったく触れなかったはずもなかろう。政治家が聴衆の志向に応じ、話を盛り上げる傾向があることはいくつもの実例がある。非公開の場ならなおさらだろう

▼かつて米国大統領選や英国のEU離脱問題で、外国からの情報操作が疑われた。日本もその渦中にあるのかどうか。民族などへの差別意識はなく、安全保障への危機感から非公開会議の中身を暴露したという小林県議だ。四面楚歌だがひるまず信念を貫き、事の真偽を明らかにするのも、県議の責務かもしれない。