▼「今年は積極果敢を掲げる」と一見勝之知事が職員への年頭あいさつで語って10カ月。コロナ禍で思うにまかせなかったが、いよいよ時期到来の思いか。来年度当初予算編成の調製方針で、重点施策は要求額に上限を定めないという
▼「財源にとらわれずに新たな施策を立案してもらうことを期待した」と財政課は珍しく太っ腹で少なくとも過去10年間では例がない。防災や子育て支援、観光振興で「大胆な重点化を図る」と明記した
▼もっとも、要求額に上限を設けないのは、実質は異例とまでは言えない。伊勢志摩サミットや、とこわか国体・同大会など、重点施策はほとんど上限なしで予算付けしてきた。発想的にはその延長線上で「大胆な重点化」というほどのことはない
▼新たな施策の立案は歴代県政の悩みのタネ。これといった施策が生まれたためしがない。国のメニューの中から県にできそうなものを引っ張ってくるのが優秀な職員で、自ら考え出す能力ではない
▼マイナスシーリングもそもそもは新規施策を引き出す苦肉の策で、10%のシーリングで新規事業を生み出した場合に例えば5%を戻す。予算獲得を至上課題とする職員は、削減されると新しいことを懸命に考え出すだろうという狙いだが、結果は、廃止した事業を化粧直しして新事業のように見せかける技がうまくなっただけだ
▼高齢化に伴う事業経費は「人件費を含めたフルコストでの検証」、県単独補助金は「思い切った廃止や休止、統合、縮小」。県が張り切る半面、県民大多数がめいる予算になるに違いない。〝新しい酷吏〟誕生である。