伊勢新聞

「まる見えリポート」天皇杯10位以内の成績を とちぎ国体へ三重県選手団

【相撲成年団体予選1回戦 和歌山・宮崎麗(手前)を破った三重・竹内宏晟=栃木県立県北体育館で】

栃木県を中心に開催の第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」が1日、開幕した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3年ぶりの国体。コロナ禍で開催を断念した昨年の第76回国体「三重とこわか国体」天皇杯(男女総合成績)1位に向けて長年選手強化に取り組んできた三重県は、9月に実施した会期前競技を含め33競技に本部役員・事務局員含めて約480人の選手団を編成し天皇杯10位以内の成績を目指す。

1年遅れの〝引退試合〟でいぶし銀の耀きを放った。会期前競技の水泳・飛び込み成年男子高飛び込み6位の村上和基選手。群馬県出身の33歳で、三重国体を見据えた県競技力向上対策本部の事業の一環で平成24年から三重県体育協会(現三重県スポーツ協会)のスポーツ指導員として活動してきた。

昨年は本県所属で東京五輪にも出場。かねて現役最後の試合に想定していた三重国体が開催直前で中止になった。栃木国体では年下のライバルたちとのメダル争いから中盤以降後退したが入賞圏内に踏みとどまり長崎国体から7大会連続の国体入賞でベテランの意地を見せた。

スポーツ指導員配置事業は県内、県外出身問わず国内外で活躍する選手らを県内に迎え入れ本県の競技力向上につなげるものだ。現役を引退したり、県外に転出して昨年の63人から約半減も33人を確保。本会期も石川県出身で今年の全日本卓球選手権男子シングルス準優勝の松平健太選手らが県協会所属で出場している。

県では平成25年、知事を本部長に発足した競技力向上対策本部を中心に三重国体に向けた強化を段階的に進めてきた。三重国体の実行委員会は今年3月の総会で解散を決めたが競技力向上対策本部は4月以降も活動を継続。財源も前年とほぼ同じ約4億円の予算規模を確保している。

「ふるさとタレントアスリート強化指定事業」「パラリンピック等選手強化指定事業」「競技団体・チームサポート事業」の新規事業もスタート。次世代スター候補の活動を支援する、ふるさとタレントアスリート強化指定選手にはいなべ総合学園高校出身で今年9月のレスリング世界選手権男子フリースタイル70キロで初出場初優勝した成國大志選手ら32人が名を連ねている。

三重国体を機に誕生した組織の活動を軌道に乗せる目的で、運営や経営に関わるアドバイザーを派遣する「競技団体・チームサポート事業」にはヴィアティン三重バレーボール女子チームなど三つのクラブチームと三重国体に向けて約10年ぶりに活動を再開した県ホッケー協会の計4団体が選ばれた。

この秋Vリーグの女子二部に初参戦するヴィアティン三重は同事業を活用して元女子日本代表の大山加奈さんをエグゼクティブアドバイザーに迎える。競技力向上対策本部の事務局を置く地域連携スポーツ推進局によると、団体競技の躍進は天皇杯順位に大きく影響するだけでなく県民の一体感醸成にも役立つとして〝シンボリックチーム〟確立にも力を入れていくという。

一見勝之知事は今年3月の最後の三重とこわか国体・三重とこわか大会実行委員会で、3巡目の順番を待つことなく「できるだけ早い時期」の国体開催を目指す意向を重ねて表明した。競技力向上対策本部も、次期国体に向けた競技力維持(天皇杯10位台)を目標に置く。

ただ、期間は当面、隣県の愛知を中心にアジア競技大会が開かれる令和8年まで。明確なゴール設定がないまま再び走り出した強化活動に関係者からは「次の目標がないのにどうすればよいか」との声も。アジア大会や2年後のパリ五輪で活躍するトップアスリート輩出につなげる以外に長年培った競技力を発揮する機会を積極的に創出できるかも競技力維持のカギを握るといえそうだ。