大観小観 2022年10月1日(土)

▼「世が世なら」は、不遇な巡り合わせの時代に生きたという嘆きの言葉。津競艇のテレビCM制作の発注で特定広告業者に便宜を図ったとして起訴された津市職員がそう思ったかどうか。見返りに18万円を受け取った容疑などで、津市から懲戒免職処分を受けた

▼「世が世」というのは、昨年末に懲戒処分64人を含む155人の処分者を出したばかりということ。大量処分者のわずか9カ月後の逮捕者に、津市も厳格に臨まざるをえなかったのではないか

▼前葉泰幸市長が同自治会関係者のスナックのママから3回受け取っていたバレンタインデーのチョコレートは18万円もしなかろうが、効果はCM制作の発注額に比べてどうだったかはともかく、職員側の金銭絡みは市長のチョコ以外出てこなかったのは、何だか夢物語を見るようだった

▼虚礼廃止が通達される前、収賄罪成立か儀礼的贈答の分かれ目は金額だとされ、給与の何倍かが目安とされた。県職員が中元、歳暮のつど関係業者から受け取る贈答品はかなりの額に達していたし、人事異動のたびに出先の市町村、業者から受け取る餞別も恒例だった。虚礼廃止通達以降、総務部長への異動者が市から受け取ったと話題になったこともある

▼中元、歳暮程度でも職務が絡んでいれば賄賂という判決が昭和4年の大審院で出ている。チョコも金も変わりない。カラ出張事件後の虚礼廃止通達で、県職員らは関係団体との会合で昼食時に即刻姿を消し、他の出席者を笑わせた

▼CM担当の免職は、みんなで踊っていて気がつけば一人残されていた哀れさがある。