一見勝之三重県知事の就任から14日で1年が過ぎた。災害対応をはじめとする危機管理体制の見直しやG7広島サミットに合わせて開かれる交通大臣会合の県内誘致など、国土交通省や海上保安庁での勤務時代に培った手腕を発揮しているようだ。一方、懸念されていた「発言の危うさ」は「女性蔑視発言」という形で露呈し、謝罪に追い込まれる事態に。市町長との対談もペースが遅い。
新型コロナの対応や三重とこわか国体・とこわか大会の延期断念など、就任早々に大きな対応に負われた一見知事だが、知事選で訴えた危機管理の充実にも、ようやく手を付け始めることができたようだ。
8月には、大規模災害の初動対応に関する検証の結果と対応策を公表。「これまでは『公共交通機関で戻れば良い』ぐらいだった」(一見知事)という県外滞在中の知事が県内に戻る方法も具体的に定めた。
9月1日には早速、この対応策を図上訓練に反映させた。会場に資機材を運び込む作業を訓練に含めるなど、より「実戦」に近づけた訓練に転換。災害対応の指示を出すシチュエーションルームを新たに設けた。
一見知事は、ここぞとばかりに陣頭指揮に臨んだ。気象庁の職員に「これは本震か、余震か」と尋ね、海上保安庁の担当者には護衛艦による支援の方法を詳細に質問。同席した県幹部らを引き締めた。
交通大臣会合の誘致にも手腕を発揮した。一見知事は昨年12月の定例記者会見で、交通大臣会合を志摩市に誘致すると表明。今年2月には斉藤鉄夫国交相に県内開催を要望するなど、精力的に活動した。
他県も誘致に名乗りを上げる中での県内開催決定。伊勢志摩サミットの実績も奏功したが、国交省の官僚だった一見知事の経歴が生かされた結果でもある。自らも「人脈を最大限に使った」と語っていた。
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他方で課題が多いのも事実。課題認識の共有を目的として4月に始めた市町長との「円卓対話」だが、そのペースは遅いと言わざるを得ない。現時点で既に対談を終えたのは九市町にとどまっている。
このペースでは全員との対談を終えるまでにあと1年を要するが、一見知事は「コロナ対策もやりながらなので、これ以上の加速は多分難しい」「1月に2回が精いっぱい」と、あまり課題意識はなさそうだ。
その円卓対話だが、9月7日に明和町で開いた際に一見知事の発言が問題化した。「観光のポイントはいかに女性を引きつけるか。若い女性が来ると、それにつられて男の子が来る。おやじも来る」と発言した。
メディアが女性蔑視とも取れる発言と報じ、共産党などは発言の撤回を要望。その後の定例記者会見で一見知事は「言い方が適切でなく、反省している」「不快に思われた方にはおわび申し上げる」と謝罪した。
一見知事の発言には、かねてから危うさが漂っていた。1月には知人の言葉を引用する形で新型コロナの協力金を受け取っている飲食店は「焼け太りのようなところもある」と発言し、県議から抗議を受けた。
就任から1年を迎えた日の定例記者会見では、市町に他の好事例を「見習ってください」と述べたことに秘書から指摘を受けたことも明かしていた。自らの発言にも「危機管理」が求められそうだ。