伊勢新聞

2022年9月23日(金)

▼NPO(非営利団体)という言葉が出始めて団体が県内でも現れたころ、ボランティア団体との違いがしばしば論じられた。ともに営利目的ではなく社会的活動を行うが、NPOは活動のために収入を考えるのは当然という考え方で、無償の奉仕を信条とするボランティア団体からは異端視された

▼阪神・淡路大震災の活躍などでNPOの存在が注目。採算を伴う活動がボランティアの今後の主役とされ、県でも北川県政が支援担当課を設置し、法人化を推進した。同時に、それまで県の別動隊として補助団体の独立運営を促し、補助金を停止していった

▼その流れはボランティア団体も活動の現場から閉め出す形となり、ばかばかしくなって活動を停止した団体は多い。のち復活も試みたが、元通りになるはずもなかった。民生委員・児童委員のなり手がいなくなったと言われて久しい

▼篤志家が中心となり任意の福祉団体として設立され百年超。民生委員法成立からでも74年になるが、ずっと無報酬。善意に安住し、民生委員のあり方改革に本気で取り組むことはなかったことが、報酬制度に表れている

▼定員増の条例改正案審議で処遇改善を求める県議会に対し、一見勝之知事は検討を約束したが「お金をもっともらいたいのかをしっかり確認しなければならない」。子ども・福祉部長は「お金が不満でやりたくないという意見はあまり聞こえてこない」

▼それはそうだろう。篤志家が今も昔通りかは知らぬが、財源不足、採算重視が決まり文句の県で、ばかばかしくてやる気の起こらない人は増えているに違いない。