伊勢新聞

2022年9月17日(土)

▼安倍晋三元首相の国葬の企画・演出業務の入札で、応じたのが元首相主催の「桜を見る会」の会場設営業者一社だけというので「県の場合」と書いた。「応札が一業者だと入札は原則中止」と続けて不安が頭をかすめた。決めたのはずいぶん前。そろそろなし崩しになっているのではないか、と

▼的中。談合を取り締まる県警が発注する「通信指令システムの再構築と賃貸借」が一社の応札で「広く他社の参加も望んだが、結果としては残念」という県警担当の釈明でめでたく落札した。残念、で済んだら警察はいらない

▼談合情報が頻繁だったころ、一業者応札は中止のルールを取り入れた。一般競争入札で安かろう悪かろうでは困ると、業者の能力に点数をつけて水準を保つ総合評価方式を国が編み出した。二つを一緒にした県の「総合評価方式の一般競争入札」が「入札が形骸化する恐れがある」と県議会から指摘された

▼一般競争入札は価格競争で、最も公平とされ、それまでの指名競争入札に取って代わった。その公平な入札方式が総合評価方式と組み合わせることで「形骸化」すなわち「従来からの業者が圧倒的に有利」になるというのである

▼県庁の談合を巡る不祥事は多い。営繕課内に〝天皇〟と呼ばれる元締がいた時代もある。改善策で入札業務を総務部に移すと、県警本部建設などを巡る業者の不可解なグループ化で県、業界を揺るがす騒ぎになった。今、一業者応札は中止の原則がうやむやになり、不公平競争へカジが切られている

▼県警がそのいくつかで重要な舞台回しを務めているのがおもしろい。