「まる見えリポート」鈴鹿青少年の森のサッカースタジアム建設 膠着状態に出口見えるか

【工事用のフェンスが設置されたスタジアム建設予定地。手前の看板には工期が来年2月末までと記載したままだ=鈴鹿市住吉町の県営鈴鹿青少年の森公園で】

三重県鈴鹿市住吉町の県営鈴鹿青少年の森公園に、市が拠点の日本フットボールリーグ(JFL)所属チーム「鈴鹿ポイントゲッターズ」の運営会社が進めるサッカースタジアム建設は、2月に着工したものの、依然として大きな進展が無い状態が続く。8月25日に関係者と非公開で面会した末松則子市長は後日、取材に対し「新しい株主を決定し、スタジアムについての窓口をきちんと示してほしいと要望し、今月25日までに回答をもらう約束をした」と話した。

膠着(こうちゃく)状態が続いていたスタジアム建設問題に、ようやく何らかの出口が見えるのか。

同チームは6月に「ガバナンス(組織統治)体制に不備がある」などとして、Jリーグから準加盟に相当する「百年構想クラブ」の資格失格処分を受けており、11月の資格再申請に向けて現在、経営権譲渡と新体制の改善を進めている。

J3に昇格し、今後スタジアム建設を進めるためには、新たな株主の確保と透明性の高い新体制が必要不可欠となる。

処分後初の面会には、チームを運営するアンリミテッドの三浦泰年代表取締役ゼネラルマネージャー(GM)、中心となってスタジアム建設を進める親会社ノーマークの西岡保之社長ら四人が訪問。

同席した市スポーツ課によると、経緯や進捗(しんちょく)状況の説明はあったが、新しい株主についての具体的な名称は出てこなかったという。

西岡社長が所有する98・5%の株は現在、弁護士に信託してある。コンプライアンスを高めるため、チームは権限が一極集中しないよう、複数に株式を分散させることで、抜本的な株主構成の変更を図る考え。

今後、ノーマークはアンリミテッドと業務提携し、チームを支援していくという。

建設計画では、約5万平方メートルの敷地に、J3規格で観戦客5千人収容のスタジアムとクラブハウス、多目的グラウンドを整備する。総工費は約8億6千万円を見込む。

人工芝の多目的グラウンドは市民に一般開放するほか、防災面でも活用することで「公益性の高い施設」として、県は市の公園使用料を全額免除する。

市と2社は令和3年6月にスタジアム設置と管理に関する協定を締結しており、施設の設置や設置に伴う公園機能復旧に係る費用は2社が負担することや、原状回復の義務を2社が負うことなど、16項目を取り決めている。

3者協定については今後、経営権譲渡などで体制が変化するが、市とアンリミテッドは「株主が変わる以外、協定内容は変わらないので、無効ではない」との考えを示す。

三浦代表取締役GMは、面会後の取材に、工期について「来年11月完成を見込んでいたが、さらに遅れる」と明らかにした。

が、市スポーツ課田之上勉主幹は「11月にずれたことも初めて聞いた」と驚く。2社が県に届け出ている正式な工期は現在も令和5年2月末のままといい、行政との連携はうまく取れていないようだ。

三浦代表取締役GMが語る「1クラブのためにスタジアムが建設されるわけではない。スタジアムを通して地域が活性化し、それが社会貢献につながれば」という熱い思いは、どこか現実と乖離(かいり)していて、温度差がある。