伊勢新聞

2022年9月3日(土)

▼「人の子」とはむろん人間の子のことだが、上に「○○も」と付くと解釈は多様。「あの悪人も」なら「人情や人倫をわきまえている」で、「警察官も」なら「立場も考えずお粗末な」

▼「教授も」ならどうか。三重大生物資源学研究科教授が平成28年度から令和3年度までの5年間、同大の会計規定に反した研究費計約260万円を不正使用していたという。ああ、また三重大かと、どっと気が重くなるのは同大病院臨床麻酔部教授による贈収賄事件などがようやく一段落したばかりだからである

▼セクハラ・マタハラ事件など不祥事は多く、その都度消化不良で幕引きされてきた思いもある。が、今回は「研究費の不正使用」という大層な言葉と裏腹な裏金の作り方とその用途だ。勤務実態のない学生の交通費や出勤表を作成、また未使用の消耗品や研究費を申請して、目的外に使用していた

▼具体的には公費で購入した物品の学生への譲渡であり交通費の支給だった。正規の手続きで申請するのが「面倒だった」という。何とも「人の子」らしいが、「人の子」の対義語は「神の子」。象牙の塔の中で自然に特別な存在、ルール無視も許されるという意識が身についたとすればセクハラ・マタハラにも共通するのかもしれない

▼県の場合、カラ出張、残業水増し、架空工事が裏金作りの3本柱だったが、共通するのは証拠が残りにくいということ。バレたのは阪神淡路大震災の時に九州へ視察した書類が出てきたから

▼三重大の場合は経理担当部署が教授の不審な手続きを発見したという。鋭い職員もいるらしい。