伊勢新聞

2022年8月26日(金)

▼小中高校の夏休みが明けが迫ってきて、子どもの自殺防止対策として児童生徒が体調不良を訴えたり、宿題が手に付かなかったりするなどのSOSのキャッチを専門家が呼びかけているという。小中高生の自殺者は年300―400人台。コロナ禍で8、9月に増えるという

▼自殺とうつ状態との関連は否定できないが、うつ病の特徴は、発症した環境から移動すればたちまち快癒状態になることだ。しかし、元の環境に戻る時期が近づくとぶり返す。戻る前後に自殺に走るケースは多い。児童生徒の場合、原因はむろん夏休み前の環境であり、ストレスを乗り越えて夏休みで解放され、再び戻る重圧が体調不良や宿題に向かう散漫などになって現れる

▼不登校が最も増えるのも夏休み後で、自殺との関連は深い。NPO法人「全国不登校新聞社」の石井志昂代表理事は「ゲームなどに現実逃避する子どもがいる」。これも救いを求めるSOS現象だから、夜更かしを叱るのは逆効果ということらしい

▼「少しでも学校がつらいと感じたら逃げてほしい」とも。専門家が異口同音に口にする言葉だが、いつでも逃げ場所があるという思いが児童生徒の安心、心の支えとなることも多い。県の不登校児童生徒は令和元年度で小学校が年695人、中学校1612人、高校778人で年々増えている

▼県教委の支援策の中心は「訪問型支援」。不登校支援アドバイザーやスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの各校派遣で、狙いは学校への復帰。その成果を誇る。つらい場所へあの手この手で引き戻している。